個人資料
正文

誰かが私たちをなだめようとしている

(2011-04-15 22:53:28) 下一個

 夫と電話で話す。
「ACジャパン(日本公共広告機構)のテレビCMがしょっちゅう流れてて、気持ちが悪くなる。節電しようとか、買占めは止めようとか、人に親切にしようとか。ある詩人の詩が使われているんだけど、こういう時にこういう詩を使う意図は何だろうって。一種の洗脳かもしれない。誰かが必死で、私たちをなだめようとしている。
 でも一方で、こういうのは仕方のないことかもしれないって思う気持ちもある。日本の政府が本當のことを伝えないで、大丈夫だって言うのも、わかる気がする。私たちは本當のことを知らないほうが結局のところ幸せなんじゃない?」
 と、私は、以前、話したことを蒸し返す。
「それはファシズムだよ。」
 夫も以前と同じ答えを繰り返す
「うん、わかってる。
 でも、例えばね、この前、雑誌(AERA4/18)に載ってた話なんだけど、東京都內に勤める外資係の女性の話で、震災當日にもう會社から大阪への避難命令が出て、家族で一週間ホテルで過ごして。費用は全部會社持ちで。その後、東京のオフィスは閉鎖で、彼女は韓國に移って働いてる。
 こういうのを聞くと、歐米(たぶん)の國って危機管理がしっかりしていて、判斷と決斷が速くてすごいな、って思うけど、じゃあ、これと同じ事を日本の全部の企業がやろうとしたらどうなる?東京は大パニック、大混亂でしょう?
 內亂の起こったリビアでだってそう。外國人はいち早く逃げるのが危機管理の大事さって言うけど、リビア人は逃げられない。銃弾の飛び交う中で生活している。日本人だって、放射能という見えない銃弾が飛び交う中で、いつミサイルみたいな大きな餘震が飛び込んでくるかわからない中で、生活していかなくっちゃならない。
 本當のことが話すのがいいってことはわかってる。だけど、本當のことを伝えた上でパニックにならない狀況を作り出す、國民の安心を導く力が、日本の政府にあるのかな?伝えたあとのフォローができないのなら、或いは、下手な伝え方をするくらいなら、伝えないほうがまだましだってことはない?」
 夫は、うん、そうだね、同感だよ、と言った。でもそれはおそらく私をなだめるためだと思う。きっと私は間違っている。

「日本はこの事態を本當に収束させることができるのかな?」
「大丈夫だよ。アメリカ軍がついてるから。日本政府だけだったらだめだろうけど。
 アメリカ軍は、ロシアより中國より、ずっとずっといろんな方法を知ってる。いろんなことができる。」
「そうなんだ。日本はアメリカと同盟國でよかったね。」

 震災や原発関連で様々なテレビ番組がある中、池上彰さんの番組だけが唯一、人を心から力づける番組だった。先週は、震災から一ヶ月以上経ち、被災地の人々がごく自然にごく普通に生活している場所へ池上さんが直接訪れてごく自然に普通に話をしていた。被災者たちを特別に扱っていない、がんばりましょうと勵ましもしない、ただ、ごく普通に淡々とやるべきことをやっている人たちの姿を紹介していた。最後に池上さんが言った。私たちは普通の生活をしましょう、と。


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