歩道橋の上から花の町駅へ(夢の話)
(2009-12-09 20:25:24)
下一個
夢の話。
歩道橋の上で女に會った。女は生身の女ではなく、幻想の女のようだった。私はその女が恐ろしくてたまらない。生身の人間でないのなら殺してもかまわないだろうと、恐ろしさに震えながらナイフを持って女に體當たりした。女は胸から血を流しながら倒れもせず、冷たい顔のままじっと立っている。私はますます恐ろしくなって、どうしてもこの女を葬り去らねばなるまいと思う。それで、もう一度體當たりして、歩道橋の手すりに追い詰め、足を持ってひっくり返した。女は橋の下へ落ちた。
一刻も早く立ち去らなければならない。私は足早に歩道橋を降りて駅へと急ぐ。真夜中だというのに、すれ違う人が少なくない。私はマフラーで顔を半分隠し、視線を避けながら小走りに走る。もうすぐ駅というそのとき、すれ違った女性に聲を掛けられた。「××さん」と私の名を呼ぶ。知り合いだ。私は人違いを裝って彼女の聲を無視した。しかし彼女はあきらめず、私の名前を呼びながら追ってくる。
それで私は、このまま駅のホームから線路に飛び込んで自殺を裝うことを思いつく。本當に飛び込むのではなく、私が強く想像すれば、彼女にはそういうシーンが見えるはずだ。私の想像によって、彼女にそういうシーンを見させるのだ。実際それは成功した。ちょうど電車が來た瞬間、私は階段を駆け上がったその勢いのまま線路に飛び込んだ。そういう場麵を強く頭に思い描いた。すると彼女はその場麵を目の當たりにして叫び聲をあげ、泣き崩れた。
私は電車に乘り込んだ。
座席は満員で、立っている人がぽつりぽつりといる。ひとつふたつ車両を移動してからドアの近くに立った。ふと橫を見ると古い知り合いの顔が目に入った。懐かしくて、思わず話しかけた。ふたことみこと言葉を交わした後、その昔なじみの彼の傍に女性が立っていることに気づく。あ、そうか、この女性が今の彼のパートナーなのだ、あんまり親しげにして彼女を誤解させたら悪いな、と思って、私は彼と話すのをやめた。
話をやめると、自分の降りる駅のことが気にかかってきた。もしかして乘り過ごしてしまったんじゃなかろうか。私の降りる駅はまだ先だろうか。
電車はまるでバスのように、民家の軒先に止まった。最近流行の民家を改造したレストランらしい。これから私がこの街に移り住むなら、このレストランにも寄ってみたいなと思う。
私の降りる駅はきっとまだこの先のはず。花の町駅で降りるはずなのだから。
(*「花の町駅」という名前は就寢する直前に見たアニメに出てきた名前。殘念ながらオリジナルではない。)
この夢を見る少し前、就寢した直後に金縛りに遭っている。寢ている自分の傍に何か恐ろしいものが迫っているのに體が動かない。私にはそれが夢だと幻想だとわかっている。目を覚ましさえすればいい。だから目を覚ませ、覚ますんだ、と自分に言い聞かせる。體を動かそうとがんばる。でもなかなか目は覚めない。恐ろしいものがすぐ傍にいる。怖くて怖くてたまらない。きっと飲み込まれてしまう。早く目を覚ませ、目を覚ますんだ。
そして必ず目は覚める。