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2011 (140)
彼らは獣醫に言った。先生、もし死體をそっくり全部譲ってくれるなら、我々があと始末をいっさいひきうけてあげよう。…(略)…今となってはもう遅いけど、ほんとうは頭だけを狙って撃ってほしかったよ。そうすれば毛皮もいい値段がついたのにね。これじゃまったく素人の仕事だ。はじめから俺たちにまかせてくれれば、もっと要領よく始末してあげたのにさ。獣醫は結局その取引に同意した。任せる以外にあるまい。なんといってもここは彼らの國なのだ。
やがて十人ばかりの中國人たちが空の荷車をいくつか引いて現れ、倉庫から動物たちの死體をひきずりだしてそこに積みこみ、縄でくくり、上からむしろで覆いをかけた。そのあいだ中國人たちはほとんど口をきかなかった。表情ひとつ変えなかった。積み込みが終わると、彼らは荷車を引いていずこへともなく去っていった。動物たちの重みで、古い荷車はあえぐような鈍い軋みを立てた。それがその暑い午後におこなわれた動物たちの――中國人たちに言わせればきわめて要領の悪い――虐殺の終わりだった。…