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昨日のお土産の話でいちおう北京旅行記もおしまいのつもりだったのが、思い出してしまった。旅行記の始めのほうで、北京広播大廈酒店の紹介をしたとき、壁が薄くて隣の聲がよく聞こえる、これについては後日エピソードを紹介する、などと書いたことを。
時間が経ってみると、たいしたエピソードでもないと書く気も失せてしまったのだが、書くと書いたことを全く無視して書かないのもなんだか気持ちが悪いので、いちおう簡単に書いておきます。
本當にたいしたことのない話なのだけれど。
殘すところ二晩となった夜。隣の部屋から大音量の音楽が。その前も時々話し聲が聞こえたり、テレビの音が聞こえたり、壁が薄いんだなと思って、私もテレビのボリュームに気をつけてた。でも皆夜が早いのか、眠りにつく頃には周囲はしんと靜まりかえっていて、その日までは壁の薄いことも特に気にもならず、快適に過ごしていた。
なのにその晩はいつまでたっても音楽が鳴り止まない。次の日も。とうとう耐え切れなくなって、夜中の1時過ぎにフロントへ。
フロントのカウンターの奧から話し聲が聞こえるのに、人の姿が見えない。奧の部屋にいるのかなぁ?と思いつつ、まだカウンター前に著かないうちに、ちょっと遠くから「ふーうーゆえん(服務員)!」と呼んだ。すると、「ぎゃー!!!!」という男の悲鳴がロビーじゅうに響きわたった。カウンターの向こうに隠れるようにして座っていた若い男性従業員が、同じ夜勤の女性と夢中になっておしゃべりしているところに私が突然聲を掛けたものだから、びっくりして大きな叫び聲をあげたのだ。
彼は、あー、びっくりした、と胸を押さえ、恐縮して何度も何度も、すみません、と謝った。
その後、私が事情を説明すると、フロアの警備員に連絡を取ってくれて、その部屋に注意するよう指示を出し、それから一緒にエレベーターを上がり部屋まで送ってくれた。
私は彼の叫び聲を聞いた時點でまずあっけにとられ、事情がわかった後は男性のあんな恐怖の叫び聲を聞くのはめずらしいと、おもしろくて、笑いだしたくなるし、すっかり毒気が抜けてしまった。しかも夜勤の若いふたりが心から気遣ってくれている様子がよくわかり、溫かな気持ちになって、いらいらした気分などどこかへ行ってしまったようだった。
隣がそんなふうでなかったら、あんなおもしろい悲鳴を聞くことも、溫かな気遣いを受けることもなかったので、結局は貴重な體験をしてなんだか得をした気分だったのでした。
災い転じて福となす。
とっぴんぱらりのぷ。