最近の政治の混迷ぶりを見聞きしていると、どう判斷してよいやらよくわからない。
特に菅首相を支持すべきかという點について、感覚的にはどうも菅さんの考えは、原子力推進にストップをかけ新しいエネルギーを開発していこうという方向にあるように見えるので、方向性としては正しそうに思える。しかし、かといって、組織の長として人を動かすことができず孤立化していく様子を見ていると、日本の政治全體がどんどんあらぬ方向へと向かっていっているようで、不安になる。
などと、考えていたら、昨日7月9日の朝日新聞で、この狀況を上手く説明しているインタビュー記事を読んだので、引用しておこう。
インタビューされているのは、古賀茂明さんという方で、経済産業省大臣官房付という肩書きがついている。つまり官僚だ。
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菅首相は気分としては、脫原発、自然エネルギー派なんですよ。でも、気分を実現する能力もスタッフもない。だから、官僚に頼る。頭、つまり首相は脫原発で、體の経産省が原発推進ですから、バラバラで支離滅裂に見えるはずです。
経産省が原発に必死なのは、それで官僚互助會システムを維持しているからです。巨額の予算を使い、電力會社と関連會社、公益法人に多數の天下りを送り込んでいる。原発をやめるダメージは、計り知れません。
一方で原子力から自然エネルーへの移行プログラムも練って、どっちにも動ける態勢をつくっています。原発維持にこだわって自然エネルギーの関連予算や団體を環境省に奪われたら大変だからです。菅首相童謡、経産省も支離滅裂に見える。
電力會社も同じです。東京電力は、原発対応で混亂の極み。…
…(略)…
首相も経産省も電力會社も機能不全。まさに日本中樞の崩壊です。國民は誰も信じられない。國民も気分は、脫原発に傾いてはいる。でも経産省や電力會社の脅しも効いて、原発なしで夏の電力は足りるのか、電気料金が上がるのではないか、経済や雇用に悪影響が出るのではないかと不安でいっぱいです。
…
なるほど。誰も彼もが混亂しているのだ。日本全體が混迷の中にある。その混迷から私たちはどうすれば抜け出すことができるのだろうか。
古賀氏は、「求められているのは組織力」だと言うけれど、今、組織の機能がいろんな場麵で上手く働かなくなっているのは、日本が根本のところで大きな変革を迫られている現われであって、組織を立て直すには、求心力となる理念や強いメッセージが必要なんじゃないかと思う。そして新しい理念は國民の多くに受け入れられなくてはいけない。
古賀氏のいうように、今は頭と體がバラバラなのだ。原発事故の甚大な被害には、誰だって恐れおののいている。このままじゃ安心は得られない、何とかしなければいけないと強く思う。頭ではそう思う。しかし一方で、體はいままでの習慣を失うことを恐れている。安定的な電力に頼る経済の発展や生活の便利さを失うことに対してどうしても大きな抵抗を感じざるを得ない。
バラバラな頭と體を統一する場と時間をつくるべきだと思う。こころゆくまで議論を重ねて、私たちは何を選択するのかという意誌の確認、國民的合意を形成するべきだ。組織力はその上で、初めて発揮されるものだと思う。
こう考えてみると、やはり菅さんのやり方はどうもまずいように思えてくる。例え首相の考え方が正しいとしても、様々な議論を通して國民全體のコンセンサスを作り上げていく、その過程が大事だと思うのだけれども。
人はある道が正しいと思っても、それが困難な道ならば選ぶのを躊躇するものだ。躊躇しているとき無理やり選ばされ心理的抵抗が殘ったままになると、歩む力も鈍りがちになる。自らそれを選び取ったという自負があって始めて、人は、困難な道を勇気を持って歩む力を持つことができるのではないだろうか。
震災以來、首相から國民へ向けられた強いメッセージや新しい理念の提案というのを、私はまだ聞いたことがない。
でも、菅さんよりマシな人もいそうにないし。困ったもんだ。