2008 (142)
2009 (130)
2010 (94)
2011 (140)
落ちる真水にあしたのいのち 知らぬしじみが砂を吐く (榊原嵐歩)
故郷(くに)を出る朝駅までおれを 追ってきたのは月ばかり (鈴木虛心)
十人集まりゃ十色の顔が 十の心でものを言う (鈴木忠彌)
みつ豆の好きな妓(こ)でした入院中も たべていましたうまそうに (冬木悪太郎)
指の出ている地下足袋乍(なが)ら 踏んで迷わぬ人の道 (穀口安閑坊)「心意気」とはこういうことを言うのだと思います。
二十五までは親兄弟に あとはあなたにやる命 (平山蘆江)人のために生きるなどという殊勝さは毛頭持たず、かといってなにがなんでも貫き通す自己をも持ち合わせていない中途半端な我が身を思いました。親兄弟や夫に「やる命」なのだという生き方を、ただ時代遅れだと切って捨てることができません。それとも「命をやる」というこの句に美學を感じてしまう私自身が時代遅れでしょうか。
なめこおろしのなめこが逃げて 箸もしたたか酔っている (加茂如水)
蛍包めば燃えそな紙よ 苺包めば滲む紅 (楠木草人)
下がる風邪熱白湯ひと口が のどに甘くて萩茶わん (佐藤富貴子)
鳶が大きな輪を書きゃ中へ 小さい雲雀が點を打つ (弘田知秋)
土筆ゃ杉菜に娘は嫁に 呼び名変わって春が行く (美野香雲)