2008 (142)
2009 (130)
2010 (94)
2011 (140)
戀の地下水流れは通う 胸と胸との二つ井戸 (有光牛聲)「井戸」というのは偶然にも心理學用語である「イド」という言葉と音が似ています。(「イド」とは「純粋に快楽を求める本能的性欲動の源泉」で「エス」ともいう。)
すれ違う人の袖さえさわれば戀に どうやらなりそなおぼろ月 (須田栄)袖觸れあうも他生の縁と言うけれど。おぼろ月、というのがミソですね。戀の始まりは、ぼわっとして、もやっとして、輪郭のはっきりしない月の光のようなもの?
わたしの心が溶けてくように 紅茶に沈んだ角砂糖 (馳崎あき子)この句だけがなんだかちょっと毛色が違うような、和菓子が並んだショーケースの中にひとつだけショートケーキが混じっているような、そんな感じがして心引かれました。ちょっと「サラダ記念日」っぽい感じです。
今日も逢ってるきのうも逢った 去年が戀しい日記帳 (船井小阿彌)燃え上がる熱い戀の想いを詠うのかなと思ったら、後半、オチがありました。ぐっと盛り上がるかとの期待をすっとはずして、さらになるほどと思わせるその展開がお見事。