ロマンチックな要素のある長い夢を見た。ちょっと韓國ドラマっぽい。私は韓國ドラマを一本も見たことがないのだが(あの『冬ソナ』さえ、見たことがない)。
私の家族は両親と妹一人で、幼い頃に弟を亡くしている(これは夢の中の話、私の実際の家族構成とは全く異なる)。そして、最近有名なスポーツ選手が我が家にホームステイした。その選手が弟にそっくりで、私は彼に戀心を抱くが、その戀は実らずに終わりを告げる。
そういう過去を持った私が、ある日、旅行で韓國を訪れる。入國カウンターの前には大勢の人が列を作っている。私はまるで國內の日帰り旅行でもするような気軽さで、パスポートすら持っていなかったので、どきどきしながら順番を待つ。しかし心配は杞憂であり、透き通るように薄い一枚の紙に何か書き込んだだけで手続きはあっけなく終わった。エレベーターで2階に行くよう指示される。
エレベーターに乘り込んで上へ行くボタンを押すが、エレベーターはドアを開けたまま下へ動いた。そして、1階の床の下に3分の2ほど下りた時點で止まってしまった。私はカチカチとボタンを何度も押すが、エレベーターはびくともしない。わずかに空いている隙間から外に這い出ることはできそうだが、這い出ている途中でエレベーターが動き出したら恐ろしいことになる、どうしようと、しばらく迷った。私はとうとう意を決して床に手を掛けよじ登った。體がつかえてなかなか出ることができない。外にいる人が私を引っ張ってくれることを期待したが、皆遠巻きに見ているだけで誰も助けてくれない。私は必死になってようやくエレベーターから脫出した。
外に出てエレベーターを振り返ると、私はいつの間にか建物の外に居て、エレベーターはゴンドラに変わっていた。私の乘っていたゴンドラの上にもう一つゴンドラが吊り下げられていて、ちょうどその中から女性が脫出しようとしているところだった。女性の體は何かに引っかかって支柱の途中にぶら下がっている。私の隣で若い女の子がライフルを構えてゴンドラを狙っているのに、気付く。彼女は多分、女性が引っかかっている支柱の金具か何かを打ち落とそうとしているのだと思う。けれども、それはいかにも危険だ。よほどの腕がなければ女性に當たってしまうだろう、と危懼していると、パンという鋭い銃聲とともに弾が飛んだ。ゴンドラにぶら下がった女性の姿はいつのまにか全裸の後ろ姿で、その白いふくよかな臀部に丸く赤い血が滲んだ。弾を撃った女の子は女性を傷つけてしまったことにショックを受け泣き叫んだ。私も泣き叫ぶ女の子の感情が伝染したのか、涙が溢れてくる。私は泣きながらゴンドラの下に駆け寄る。
場麵は一転して、私は観光地の一角に一人佇んでいる。そこへ、一人の知的でスマートな感じのする青年が話しかけてきた。彼はプリントされた寫真やネガが挾まれているクリアファイルを私に見せた。十數枚の寫真の中に私が寫っているものがあり、彼はそれを私にくれると言う。寫真はスナップだったが、どれも上手に撮れていて、プロのようだ。きっと彼はセミプロのカメラマンで寫真を観光客に売るバイトをしているのだと、私は思った。観光の名所である近くの小島を案內するというので、私は彼と船で小島に渡った。
小島には土産物屋が並んでいた。一通り見た後、私は何か用事があって平屋建ての小さな診療所に寄る。土間になった待合室のパイプ椅子に腰掛けて待っているうちに、私は眠り込んでしまった。気が付くともう日が暮れかかっていて、看護婦が玄関の鍵を閉めようとしている。私はあわてて外へ出た。青年は外で待っていた。私はなぜ早く教えてくれなかったのかと彼を責めた。きっと最終の船はもう出てしまったことだろう。
船はやはり出てしまっていた。今夜はここに泊まるしかない。宿を決めて、夕食を取ることにした。パンフレットを見たが、あまり食べたいような料理が見つからない。青年が、ここにしよう、と決めたのは「高級魚料理」と書かれた料亭だった。私は著替えて、いったいどんな料理だろうか、と思いながら料亭に向かう。彼は既に正裝して先にテーブルにつき、私を待っていた。
これからの展開が期待されるというところで、目が覚めてしまった。
ああ、殘念無念!