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モチの木

(2007-08-06 22:04:38) 下一個

    風邪がなかなか抜け切らなくてだるくて仕方がないけれど、少し體を動かしたほうがいいかもしれないと思って、夕方犬を連れて散歩に出かけようと思った。風邪薬は一箱飲みきってしまったから、胃薬とビタミン剤を口に放り込んでから出かける。

  河川敷のスポーツ広場を橫切って河原に下りる。河岸からすぐの水流は茶色く濁っていた。滔滔と流れる清流が見たくてしばらく上流へと歩くが、手前をちょろちょろと流れる幅の狹い支流に沿っていくうちに、気が付くと本流はずっと向こう岸近くに遠ざかっていた。ごろごろとした石ころの上を歩くのにも疲れて、諦めて広場に戻る。

  芝生の上に腰を下ろして、モチの木を見上げる。このところ散歩も短めに切り上げていたから、この木を見るのも久しぶりだ。寒くなり始める頃に小さな赤い実が鈴なりになって、それがなんともかわいらしく美しく、毎年楽しみにしている。公園の芝生の上に植わっているのはほとんど潅木で、そのモチの木だけが一本高くすっくと伸びている。

 犬は勝手に芝生の上を喜び勇んで走り回ってる。水の上を通ってきた風が火照った體を冷やす。蟬の聲と蟲の音が渾然となってちりちりとした震動として肌に伝わってくる。空に筋を描いている雲が鳳凰のように見える。吉兆だろうか。繰り返される四季の移り変わりの中で、毎日毎日ただじっと立ちつくしているモチの木がうらやましくなった。このモチの木に生まれたらよかったのに、などと思う。

 夕闇はどんどん濃くなっていくけれど、なんだか疲れてしまって歩きたくない。根が生えたように腰を下ろしたままでいると、一人で走り回るのに飽きた犬が座ってる私に體當たりしてきた。空の鳳凰ももうすっかり形を変えていた。

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