過去最高益なのに株価は急落
海外投資家がサムスンを見限る理由

 7月初旬、サムスン電子は4-6月期の決算を発表した。それによると、売上高は前年同月比7.8%増の57億ウォン(約5兆円)、営業利益は9兆5000億ウォン(約8340億円)と過去最高の収益となった。

 ところが、當日の韓國の株式市場で同社の株式は売り込まれ、一時株価は前日比大幅安となる場麵もあった。その背景には、同社の営業利益が10兆ウォンを超えるとの予想に屆かず、投資家の間で一種の失望感が醸成されたことがある。

 しかし、失望感だけの理由ではないだろう。サムスンには、もっと根が深い問題が潛んでいると見た方がよい。そうでないと、海外投資家の多くが、サムスン株の売卻に走った現象を説明することが難しい。

 足もとの収益狀況を見れば、依然、サムスンは世界最大のIT企業であることに変わりはない。また、半導體や液晶などのIT関連の重要部品から、スマートフォンやタブレットPCなどの完成品までをつくる生産能力は、世界有數のメーカーであることを象徴している。

 そうした狀況にもかかわらず、海外投資家を始め多くの投資家が、今回の決算をきっかけにサムスンの將來性に疑問符を付けたのである。韓國経済の屋台骨を背負うサムスンの將來に疑問符が付くということは、とりも直さず、韓國経済の先行きに黃色信號が燈ったことを意味する。

 以前から、海外の金融機関が韓國から撤退する動きを示しているという。韓國経済は、外から見ているよりも深刻な狀況にあると考えるべきだろう。

 現在、IT製品のスターであるスマートフォンについて、サムスンは世界市場をアップルと二分する有力企業である。その有力ITメーカーを、海外投資家らが見限る理由はどこにあるのだろうか。おそらく、2つのファクターを考えるとわかり易い。

1つは、スマートフォン市場の成熟化、特に高額・高機能製品が売れ筋の米國など先進國での市場が飽和狀態に近づいていることだ。

 サムスンのIM事業部(IT・モバイル)の今年4-6月期の売上高は約34兆ウォン(約2兆9850億円)、営業利益は約6兆ウォン(約5270億円)と見られる。特に、今年4月に発表した“ギャラクシーS4”は、最初の2ヵ月間で2000萬台を超える売り上げを稼いだ。わが國のメーカーと比較すると、同社のIM事業部は絶好調に見える。

 問題は、今後そうした好調を続けることができるか否かだ。米國市場では、すでに攜帯保有者の6割近くがスマートフォンを持っている。他の先進國でも、多かれ少なかれ同様の狀況だ。そうした狀況の先進國市場と、これから大きな伸びを期待できる新興國市場の両方で、サムスンは現在のペースで売り上げを続けることができるだろうか。

ドコモや中國企業がライバルに
スマートフォン事業に忍び寄る影

 それは難しいかもしれない。先進國の1つであるわが國では、ドコモが今までアップルのiPhoneを扱わず、サムスンや國內メーカーの製品を扱ってきた。それは、サムスンにとって大きなメリットになっていただろう。しかし、すでにドコモはiPhoneの扱いを検討していると言われており、それが実現すると、サムスンにとって痛手になる可能性は高い。

 そして今後、成長性の見込める新興國の販売強化を目指す場合、強力なライバルが出てくる。それは、低価格帯製品に強みを持つ中國メーカーだ。

 ファーウェイやZTEなどのメーカーは、ここへ來てかなり実力をつけており、低価格帯中心の市場である新興國では手ごわいライバルになるはずだ。追い上げ著しい中國企業との競爭は、サムスンにとってかなり厳しい狀況になるだろう。

 もう1つ、サムスンが抱える問題は技術力の蓄積だ。今までサムスンは、アップルなどが生み出した新製品の後追いをしてきた。その場合、重要な技術力は、迅速に先行企業の製品を研究して、その製品と同じ製品をより効率的につくるテクニックだ。

サムスンに限らず韓國企業の多くは、そうした技術をわが國などの技術者を高給で採用する手法でカバーしてきた。具體的には、わが國の家電メーカーなどのシニアクラスの技術者を、積極的に引き抜くことで必要な技術力の埋め合わせを行ってきた。その手法は、最近まで有効にワークしてきた。

 ところが、サムスンがそうした手法でアップルに追いつき、さらに追い越そうとすれば、新しい技術や製品を自力で開発することが必要になる。それを実現するためには、今までのような間に合わせの手法だけでは十分な効果を上げることはできず、時間をかけて自分の実力で技術力を蓄積しなければならない。

韓國が抱える技術開発の課題
サムスンを建て直すのは難しい?

 サムスンに勤務する日本人にヒアリングすると、「中途採用された日本人技術者は3年間でお払い箱になると聞いていたが、それは日本人に限らず、韓國人の従業員でも同じことだ」と言っていた。それでは、人の入れ替わりが激しくて、仕事のノウハウや技術の蓄積を進めることは難しい。

 彼は、「サムスンはかなり深刻な狀況に陥っており、組織全體を立て直すのはかなり難しい」との感觸を持っていた。

 また、新興國のライバル企業の存在も気になる。既存の製品をつくる場合には、韓國よりも有利な條件のメーカーがある。それは中國のメーカーだ。中國の人件費は上昇しているとはいえ、まだ韓國よりは低い。

 それに加えて、中國企業は急速にIT関連の汎用技術を蓄積しており、韓國にとって相當手ごわいライバルに育っている。特に、新興國向けの低価格帯製品については、すでに中國メーカーの方が優位に立っている分野もあるという。

 リーマンショック以降のウォン安の追い風もあり、サムスンが快進撃を続けて世界有數のIT企業にのし上がるにしたがって、韓國経済も顕著な成長過程を歩むことができた。ところが、足もとでウォン安傾向が終焉を迎えつつある現在、韓國企業にとって自國通貨安の恩恵はほぼ消滅した。

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どこかで政策邌嬰?憑`する?
樸政権が辿る「いつか來た道」

 通貨安のメリットがなくなると、韓國企業は世界市場で、実力によって勝負をしなければならない。しかし、韓國企業の技術力を冷靜に見ると、いくつかの例外分野を除いて、中長期的に韓國企業が世界市場で高いシェアを維持することは難しいだろう。

 しかも、韓國経済の構造を考えると、多くの生産用の機械や重要部材をわが國企業に依存せざるを得ない狀況が続いている。

 それに加えて、中國企業の追い上げによって、厳しい価格競爭に巻き込まれることになる。それは、かつて歐米諸國やわが國が辿ってきた道だ。単純に言えば、韓國は今後、その道を歩むようになる。

 造船や鉄鋼などの産業分野で、わが國は歐米諸國からトップの座を奪った。しかし、それは長続きせず、當該分野で韓國企業に追いかけられ、トップの座を譲ることになった。その韓國は、すでに造船などの分野では中國に追い抜かれている。まさに、世界の歴史は繰り返されているのである。

 韓國経済についてもう1つ重要なポイントがある。それは、韓國経済の経済的な富の分配のシステムが不公正(フェアー)でないことだ。韓國のGDPで10大財閥が占める割合は70%程度と言われている。それだけ、財閥係企業に富の分配が偏っているということだ。

 それは、財閥係企業の関係者にとって有利だが、一般庶民には明らかに不利だ。それに対して、不満が出るのは當然だ。

 樸政権は経済民主化を約束して政権に付き、當初は約束を果たしてきたものの、経済狀況の悪化によって成長重視型の政策邌嬰碩妞蚯肖盲郡妊預銫欷皮い搿¥筏?貳ⅳ餞欷蜷Lい期間続けることには無理がある。たとえ、わが國を悪者にして國民の関心をそちらに向けたとしても、どこかで政策邌嬰似憑`が生じることだろう。