Chris Morris
[7日 ロイター] - 米アップルのメディア向けイベントから「真の驚き」がなくなって久しい。9日(日本時間10日)に発表されるとみられる「iPhone(アイフォーン)6」で、アップルファンの渇望はようやく満たされることになりそうだ。
これまで出てきたあらゆる情報を整理すると、アップルが今回、過去數年で「アンドロイド」端末に向かっていた消費者の関心を取り戻す決意を示すであろうことが見て取れる。
しかし、言うは易く行うは難しだ。「アンドロイド」ファンを振り向かせるには、「アンドロイド」端末の盟主である韓國サムスン電子が流行遅れに見えるようにしなくてはならない。そのためには、ますます飽きっぽくなりつつある消費者を驚かせる必要がある。
過去數年、サムスンは大畫麵スマートフォンの分野では向かうところほぼ敵なしだった。新型「iPhone」2機種は現行機種より大型化が期待され、その部分ではサムスンの優位性を打ち消す可能性がある。各種報道によれば、「iPhone6」は、畫麵サイズが4.7インチと5.5インチの2モデルが用意されるという。
しかし、サイズがすべてではない。
「iPhone6」には、サムスンが先に発表した新型ファブレット「ギャラクシー?ノート4」を淩駕する機能も求められる。先週ベルリンで開催された家電見本市IFAで発表された「ギャラクシー?ノート4」は、64ビットプロセッサを搭載し、ストレージの容量も大きい。カメラの質も向上したが、一部ファンの期待には及ばなかった。
そこがアップルにとってはチャンスとなる。「iPhone6」はアップルにとって2世代目の64ビットプロセッサ搭載機で、カメラ機能も向上されるとみられる。
しかし、そこで終わりにはならない。
一般消費者の耳にはなじみが薄い言葉かもしれないが、近距離無線通信(NFC)の利便性を過小評価するのは禁物だ。
パイパー?ジャフレーのアナリスト、ジーン?マンスター氏は、「iPhone6」にはNFCを使った「支払い機能」が約70%の確率で搭載されると予想した。これが実現されれば、真の差別化要因となるかもしれない。
NFCの利便性は、アップルの長年のパートナーである米ウォルト?ディズニーの「マジックバンド」を見るのが最も分かりやすい。テーマパークの來園者はこのリストバンドを入場チケットやホテルのルームキーとしてだけでなく、財布代わりに使うこともできる。こうした機器が日常生活にも入り込んでくるとしたらどうだろうか。
スマホをタップするだけで食料品の支払いができたり、コードを入力するだけでガソリン代が払えたりするようになれば、それは十分に消費者を振り向かせる機能になる。
NFCの強みを生かすには、アップルには、決済や小売りで多くの協力企業も必要になる。誰も支払いを受け入れなければ、どれだけ格好良くても問題にならない。
同じNFC技術はもちろん、スマートウォッチ「iWatch」にも組み込まれる可能性がある。そうなるべきだが、そもそも、これまで長い間うわさになっていたスマートウォッチはついに発表の時を迎えるのだろうか。
アップルはここしばらく、真に新しいハードウエアを世に送り出していない(「iPad」のデビューは2010年だった)。同社は業績麵では良くやっているが、2011年に共同創業者のスティーブ?ジョブズ氏が死去して以降、革新性は失われたとの聲も聞かれる。「iWatch」が華々しく発表されれば、そうした批判もやむだろう。
とはいえ、「iWatch」は、これまでに発売されたスマートウォッチと同じ轍(てつ)を踏まないようにしなくてはならない。サムスンやLG、モトローラが出したスマートウォッチはいずれも、バッテリー駆動時間の短さが酷評されている。また、多くのスマートウォッチは見た目も格好悪い。どちらも大衆には受け入れられない要素だ。
アップルには、デザインのセンスがある。プロセッサも自社開発に切り替えており、バッテリー駆動時間も改善されたと思われる。両方とも同社のアドバンテージとして働くだろう。
さらにアップルは、2010年の「iPad」発売で見せたように、「iWatch」を誰もが欲しがるような端末にする必要がある。iPadは発売開始からの9カ月間で1480萬台を売り上げ、アナリストの最も楽観的な予想も大幅に上回った。
Chris Morris
そのためには、「アンドロイド」係のスマートウォッチのように、メールやメッセージを中継するだけでは物足りない。健康管理サービス「ヘルスキット」や家庭內の機器操作ができる「ホームキット」などの機能も搭載されなくてはならない。
これらの機能がそれなりに安価に提供されれば、それに越したことはない。ただ、そのサプライズをアップルに期待するのも禁物だろう。 *筆者は、1996年から消費者向け技術とビデオゲーム業界をカバーしてきたジャーナリストで、これまでにいくつもの大きなスクープを報じたほか、分析記事やトレンド分析も執筆。CNBCドットコムや米ヤフー、コモン?センス?メディアに定期的に寄稿し、全國ネットのラジオ番組2つの司會も務める。 *このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの當コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また當コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。當コンテンツは投資助言となる投資、稅金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は當該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。