モンゴル核処分場計畫:米「核なき世界」へ思惑
日米モンゴル3カ國による核廃棄物の貯蔵・処分場建設を巡る極秘交渉は、原子力ビジネス拡大のほか、核不拡散體製を実質的に整備したい、「核なき世界」を掲げる米政権の思惑も絡んでいる。
◇再処理狙う新興國封じ…國際施設設置で主導権
核兵器の原料となるプルトニウムは、原発で使用した核燃料の再処理で抽出される。北朝鮮はこの手法で核兵器を開発し、核拡散防止條約(NPT)非加盟國のイスラエルやパキスタンなども同じ手法で開発を進めているとみられている。
また、原発輸出市場に參入した韓國などが、米國に再処理施設の建設容認を要求。非核國をうたいながら核兵器開発が可能な再処理を認められている日本、NPT未加盟のまま核兵器を保有するインドが米國から原子力技術を供與されている「不公平感」が源泉だ。
同様の不公平感は、核兵器を持たない國々に潛在している。原発を持つ國が使用済み燃料の再処理を始めれば、核拡散に事実上歯止めがかからなくなり、「第2、第3の北朝鮮」が生まれる恐れがある。米國は、國際的な貯蔵・処分施設を主導して造ることで、「核なき世界」に向けた秩序を構築したいのだ。
また、國際的な施設は國際原子力機関(IAEA)も必要性を訴えてきたが、他國の核ゴミまで引き受ける國は現れなかった。歐州連合(EU)は2015年までに域內での処理態勢を整える計畫だが、それ以外の地域では見通しがなかった。
米國務省のストラトフォード部長(原子力安全擔當)は3月末、ワシントンでの核専門家會合で、「台灣や韓國などは使用済み核燃料の扱いに困っている。國際的な処分施設は諸問題を一気に解決する」と強調した。
モンゴル政府內には、見返りとして核燃料加工などの技術供與も得ることで、核燃料の輸出國として経済を発展させたいとの思惑がある。アラブ首長國連邦(UAE)とも同じ狙いで今年1月から交渉を始め、日米との計畫に「保険」をかけている。日米が2月上旬に外交文書の署名を狙ったのは、UAEより交渉を有利に進めるためでもあった。【會川晴之】