「放射能怖い」福島からの避難児童に偏見

原発事故で被ばくを恐れ福島県から避難してきた子供が「放射能怖い」と偏見を持たれるケースがあるとして、千葉県船橋市教委が全市立小中學校長らに配慮するよう異例の指導を行っていたことが分かった。福島県南相馬市から船橋市へ避難した小學生の兄弟の事例では、公園で遊んでいると地元の子供から露骨に避けられたという。兄弟は深く傷つき、両親らは別の場所へ再び避難した。大震災から1カ月たつが、福島第1原発の深刻な事態が収まる見通しは立っていない。知識の欠如に基づく差別や偏見が広がることを専門家は懸念している。【味澤由妃】

 南相馬市の小學生の兄弟のケースは、避難者の受け入れ活動に熱心な船橋市議の一人が把握し、市教委に指摘した。市議によると兄弟は小5と小1で、両親と祖父母の6人で震災直後船橋市內の親類宅に身を寄せ、4月に市內の小學校に転校、入學する予定だった。

 兄弟は3月中旬、市內の公園で遊んでいると、方言を耳にした地元の子供たちから「どこから來たの?」と聞かれた。兄弟が「福島から」と答えると、みな「放射線がうつる」「わー」と叫び、逃げていった。兄弟は泣きながら親類宅に戻り、両親らは相談。「嫌がる子供を我慢させてまで千葉にいる必要はない」と考え、福島市へ再び避難した。

 福島県から県內に避難し、この家族をよく知る男性は「タクシーの乗車や病院での診察を拒否された知人もいるようだ。大人たちでもこうなのだから、子供たちの反応も仕方がない。でも、當事者の子供はつらいだろう」と話す。

 市議の指摘を受け、船橋市教委は3月28日「(放射能への)大人の不安が子どもたちにも影響を與え、冷靜な対応がとれなくなることが危懼される」として、避難児童に「思いやりをもって接し、溫かく迎える」「避難者の不安な気持ちを考え言動に注意する」よう市立小中學校長らに通知した。

 市教委によると今月から市內の學校へ通う被災者・避難者の子供は43人で、うち38人は福島県出身という。

 避難児童を多數受け入れる市立行田西小學校の中村俊一校長は、「溫かく迎えるのは言われなくても當たり前のこと」と強調。「放射能を巡る偏見や方言で児童を傷つけることがないよう注意深く見守ろうと、教職員に何度も話している。始業式や入學式で『いつか古裏に帰れる日が來るでしょう。その時に船橋に來て良かった、友達ができて良かったと思ってもらえるよう仲良くしてください』と呼びかけた」と話す。

 市教委に指摘した市議は「話を聞き、心がさみしくなった。船橋の子供たちにはいつも『思いやりのある人になってほしい』と言っている」と話す。

   ◇  ◇

 千葉市稲毛區の放射線醫學総合研究所(放醫研)は福島第1原発事故直後の3月14日、放射線や被ばくを巡る電話相談窓口を開設。研究員や退職者6人が朝から深夜まで応対している。相談は主に首都圏から寄せられ、すでに6000件を超えている。

 震災直後は「原発近くに住む親類を家で受け入れたいが、自分の子に影響はないか」という內容が多かった。その後、避難者の數が増えると「アパートの入居で難色を示された」「福祉施設や病院で被ばく線量を調べるスクリーニング検査の証明書の提出を求められた」などの相談が急増した。

 今回の船橋のケースも踏まえ、放醫研の柿沼誌津子博士は「大人をまず教育したい。受け入れる側が心配すべきことは何もありません。むしろ心配しすぎる方が體に悪い」と指摘。「放射線について正確な知識に基づき、『正しく怖がる』ことが大切です。もっと勉強してほしいし、私たちも理解を深めてもらえるよう努力しなければならない」と話す。放醫研は相談窓口(電話043・290・4003)を當麵続けるという。

請您先登陸,再發跟帖!