文科省が通知 交付金も重點配分
文科省は8日、國立大學に対して人文社會科學や教員養成の學部?大學院の縮小や統廃合などを求める通知を出しました。理係人材を求める財界の要求に応えて“人文係つぶし”に踏み出すものです。各大學は通知を參考に中期目標?中期計畫を策定することになります。
通知は、「持続的な競爭力を持ち、高い付加価値を生み出す國立大學となることが期待される」と強調。理係分野の「人材需要」などを理由に、人文社會科學係や教員養成係の學部?大學院について「組織の廃止や社會的要請の高い分野への転換に積極的に取り組む」と明記しました。
國立大學への運営費交付金についても「機能強化に積極的に取り組む大學に対し重點配分する」として、(1)世界で卓越した研究(2)全國的な研究(3)地域貢獻―の三つの支援の枠組みを示しました。學長主導で學部の統廃合などを進めていくよう財政支援の強化も盛り込みました。
*****大學院についても定員見直しや、組織廃止?統合も含めた見直しを求めています。
解説
日本社會の発展にも逆行
文科省の通知(8日)は、財界?大企業の要求に応えて大學や研究分野を國が選別し、予算の重點配分と一體で教員養成?人文社會科學係を縮小?廃止しようとするものです。
財界は「研究麵で新しい発見がなくなってきたり、動きが止まっているような學問領域を思い切ってやめて、新しい領域、學際分野を立ち上げるべきだ」(小林喜光経済同友會代表幹事)と主張。“國際競爭力強化”のために學部學科の統廃合を公然と求めています。
これに応えて安倍內閣は、各大學に「3類型」―(1)世界最高の研究(2)全國的研究(3)地域貢獻―から一つを選択するよう求めており、人文係統廃合はその一環です。安倍內閣は各大學の取り組みを評価して運営費交付金も重點配分する計畫です。
すでに國立大學の基盤的経費である運営費交付金は、法人化後の10年で約1292億円も削減され、教育研究に重大な障害をつくりだしています。重點配分によって、各大學が類型ごとに資金獲得競爭に追い立てられ、大學や學部の再編?統廃合が進められる危険性を抱えています。
しかし、日本學術會議が「(人文科學は)人間と社會のあり方を相対化し批判的に考察する」(提言)と指摘するように、人文科學係の役割は極めて重要です。
多様な役割?機能を持つ大學を國が上から再編していくことは、學問?研究の発展だけでなく、日本社會の豊かな発展にも逆行するものです。
(深山直人)