出典「本當のこと」を伝えない日本の新聞
著者 マーティン・ファクラー
1966年、アメリカ合衆國アイオワ州出身。ニーヨーク・タイムズ東京支局長
雙葉新書P178~179
中國よりも閉鎖的な日本のマスコミ
おもしろいことに、一黨獨裁の警察國家である中國の記者たちのほうが、日本の記者クラブメディアよりも體製を批判している。中國広東省の週刊誌『南方週末』がその筆頭だ。同誌は、広東省共産黨委員會機関紙の南方日報が出資して1980年代に創刊された。香港に近く、オープンな空気が漂う広東省で発行されているだけに、政治的なバランスをとりながら、突っ込んだ報道をしている。
もちろん中國においては、共産黨批判などメディアがふれられないタブーも存在する。そうした製限がある中で、社會の不正や政治の腐敗などに憤る一部の気骨ある中國人記者たちががんぱっている。もし中國で自由に取材・報道ができるようになれば、すばらしいジャーナリズムが誕生すると思う。
中國に『財経』という優れた経済誌もある。獨立係の雑誌で、中國版の『週刊東洋経済』と言っていい。この経済誌は、『南方週末』とは違った切り口のスクープ記事を発表している。同誌の名物女性総編集長・胡舒立氏はトラブルにより編集部を去ったが、2000年に「財新網」を新たに設立している。このメディアは週刊誌や月刊誌、ウェブサイトを活用しながら、反體製的な調査報道を展開している。
中國共産黨による弾圧があるなか、中國のメディアのなかにはジャーナリズムを追究している記者たちがいるのだ。日本でも現場の記者たちが聲を上げ、それを受けた勇気ある新聞社が立ち上がり、記者クラブという日本版“一黨獨裁組織”に風穴を開けてほしい。