【緒言】夜明けになると腹痛になるという特徴が持っている患者さんに漢方醫學理論のもとで認識して治療したところ、速やかな鎮痛効果が出てきたので、考察を付けて報告する。(中國で治療した症例)
【症例】52歳、男性。主訴:腹痛。半年以來、原因も分からなく腹痛になった。空腹時に痛みがよく出てくる。特に朝の6時前後には腹が激しく痛みが出て、目覚ましのようにほとんど毎日であった。消化道造影で胃腸の寫真を撮って十二指腸潰瘍が認められたが、新薬にてHP(ヘリコバクター・ピロリ菌)除菌とH2受容體拮抗剤とは改善されなかったので漢方外來に受診。漢方醫學的所見では、身長172cm、體重52kg、顔色萎黃、倦怠感。舌質淡紅、舌體太り、舌苔薄白、虛脈。
【結果】『金匱要略・血痺虛労篇』では「虛労裏急,諸不足,黃耆建中湯主之。」と記載される。それを根拠として溫中補虛,緩急止痛を図る目的で、黃耆建中湯を常用量(黃耆10g桂枝6g芍薬12g炙甘草6g生薑6g大棗12個)で投與したところ、患者さんは一日分煎じ薬を服薬して、朝目覚ましのような痛みが出ることがなくなった。それから黃耆建中湯で二週間の治療を経て、自己廃薬した。一年の観察で再発しなかった。
【総括】胃潰瘍・十二指腸潰瘍は原因として、ストレス、不規則な食生活、ヘリコバクター・ピロリ菌感染、タバコとアルコールなどがあるが、生活習慣に指導のほか、抗酸剤とHP除菌治療困難症例に対して漢方薬投與の有用性が示されたものである。