<貿易収支>第2次石油危機後以來、31年ぶり赤字に
毎日新聞 1月25日(水)10時4分配信
財務省が25日発表した11年の貿易統計速報(通関ベース)によると、製品や原材料の輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2兆4927億円の赤字(10年は6兆6347億円の?鄭─趣勝盲俊D覬gの貿易赤字は第2次石油危機後の80年(2兆6129億円の赤字)以來31年ぶりで、赤字幅は80年に次ぐ過去2番目の水準。
歴史的な円高に加え東日本大震災などの影響で輸出が落ち込んだ一方、東京電力福島第1原発事故に伴い火力発電向け燃料の輸入が大きく膨らんだ。年度ベースではリーマン・ショック時の08年度に28年ぶりの赤字(7648億円)に転落したことがあるが、円高基調や燃料の輸入増はしばらく続きそうで、今後も貿易赤字が定著するとの見方もある。
輸出は前年比2.7%減の65兆5547億円で、リーマン・ショック後の09年以來2年ぶりに減少した。米歐の景気停滯を背景に円相場の年間平均が1ドル=79円97銭と過去最高の円高水準を記録し、これが逆風になった。さらに震災直後のサプライチェーン(部品供給網)の寸斷や歐州債務危機による世界経済の悪化、タイの洪水に伴う部品不足も響き、主力の自動車が10.6%減、半導體等電子部品も14.2%減と急減した。地域別では米國が3.4%減、アジアが3.0%減だった。
一方、輸入は同12.0%増の68兆474億円と2年連続で増加した。原油価格が高止まりしているうえ、原発事故で國內原発が相次いで停止したことに伴い、火力発電の燃料となる石油や液化天然ガス(LNG)の需要が急増。円高効果は限定的で、原粗油の輸入は21.3%増、LNGは37.5%増だった。
同時に発表された11年12月の輸出額は前年同月比8.0%減の5兆6237億円、輸入は同8.1%増の5兆8288億円で、差し引きの貿易収支は2051億円の赤字。月間ベースの貿易赤字は10月から3カ月連続で、11年通年では1、4、5、8月と合わせて7カ月赤字を記録した。【小倉祥徳】
◇「経常収支も赤字転落間近」の聲
11年の日本の貿易収支が31年ぶりの赤字に転落し、巨額の貿易?證蚍eみ上げてきた「輸出立國」は大きな転換點を迎えた。海外からの利子や配當などを含めた11年の経常収支は?證虼_保する見通しだが、エコノミストの間では「経常収支の赤字転落も間近」との見方もある。海外から日本に流入する資金が細っていくと、巨額の日本國債を國內の資金だけでは買い支えられなくなり、財政邌嬰淙氈窘U済に悪影響を及ぼす懸念が出てくる。
日本と海外との資金のやりとりを総合的に示す経常収支は、貿易収支に加え、所得収支(日本が海外から得た利子や配當などと海外に支払った利子や配當などの差額)などで構成される。日本はこれまでの貿易?證勝嗓塹盲摳Y金を海外の金融資産などに投資。さらに日本企業はアジアなどへの進出を拡大しており、こうした収益から得られる所得収支は、11年は11月までで約13.3兆円の?證趣勝盲皮?輟ⅳ長欷琴Q易赤字を穴埋めして、11年は経常収支が?證蚓S持できる見通しだ。
しかし、08年のリーマン・ショックや最近の歐州債務危機などで海外の金融市場は低迷。日本の所得収支も08年には年間で15.8兆円の?證坤盲郡?Ⅻ字幅が減少している。貿易赤字が定著すると、「経常収支も今後5年程度で赤字に転落する」との予測もある。
経常赤字は、海外から借金しないと日本経済が成り立たない狀態を示す。現在は國內の資金で買い支えている日本國債も、海外投資家に買ってもらわないとさばけない。海外投資家はいろいろな國を比較して投資先を決めるため、巨額の財政赤字を抱える日本の信用力は低いと判斷されれば、日本國債が売られ、金利が上昇するリスクが強まる。そうなれば、企業の設備投資に必要な借入金や住宅ローンなどの負擔が重くなり、景気に足かせとなる。
政府は経常?證韋Δ瀝素斦?俳à蔚瀾瞍蚋釘堡氡匾??ⅳ搿O?M増稅を柱とする稅と社會保障の一體改革は難航必至だが、貿易赤字転落は、財政規律の早期回復を促す警鐘とも言える。【小倉祥徳】