思い出は琥珀に留まる蟲であり、
時間の殻に凝らされている。
あの聲が記憶の空を畫きすぎ、
風が平らな池に波を吹き起こす。
やさしさが琥珀を溶けてしまい、
昔の顔麵が飛び出てくる。
遺憾は枝先の風音のように揺れ、
溜息は落葉の如くこっそりと地に付く。
この世に不遇は
浜にある砂のように散らばっている、
細雨になって歴史の川に流れ込んで消える。
淡々と笑いを流れ水に捨て、
心と骨の奧に滲み込んで殘るものがある。
涙は幽かな星光の如く、
月光の中にぽっと光っては消える。