現実的な力を持つ非現実的な夢想
文章來源: 小春日和2011-06-23 05:07:51
 
 村上春樹がカタルーニャ國際賞を受賞し、6月10日に行った受賞スピーチが話題となった。
 プロの作家に対してこういう言い方は失禮かもしれないが、選びに選ばれた言葉と練りに練り上げられた文章は見事であるし、內容についても私は諸手を挙げて賛同するので、それ以上ここで書くこともないと思っていた。全文を読めばそれで充分なので。
 しかし、世間の反応が少し気になってネットで調べてみると、賛否両論あるようだ。共感する人は私と同じく全麵的賛成が多く、異論を唱える人は、作家が何を偉そうにとか、具體的な提案がないとか、非現実的だとか。
 非現実的…。まさに本人がそう言っているのである。タイトルからして「非現実的な夢想家として」なのだから。
 現実って何だろう。原発がある狀況が現実的で、なくすのは非現実的?それは「現実」というよりも、「現狀」だという気もするのだけれども。
 非現実的な夢想というのは、しばしば現狀を打開する楔たる力を持ち得るのではないかと、私は思う。

 私みたいなのは、きっとただの夢想家なんだ。村上春樹のような人は、非現実的な夢想を多くの人々に伝播させる力を持っている。この受賞スピーチにしても、平易な言葉を用い、論理的にもとてもわかりやすい文章で、まるで普通の人々に呼びかけている、訴えかけているような感じがした。
 大手の新聞やニュースで、これを深く掘り下げて論じてるのを見たことがないけれど、ワイドショーやエッセイやちょっとした評論などのコメントでは、影響を受けているんじゃないかと思われる內容をしばしば見かける。大手メディアが大きく取り上げなくても、いや、取り上げられないからこそかえって、個々人の胸にじかに屆き、じわじわと広がる影響力を持っているんじゃないだろうか。
 むろん賛同者ばかりじゃない。前述したように、賛否両論ある。けれど、少なくとも、“どういう視點で原発を語るか”という點において、「非現実的な夢想家」としての立場から反原発を唱えるという意思表明が世界の村上春樹から提示されたことは、現実のその他大勢の夢想家たちに大きな自信を與え得ることだろうと思う。